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オルガスマシン(2009年10冊目)

オルガスマシン

オルガスマシン

イアン・ワトスンは「エンベディング」しか読んだことがないのだが(積読は幾冊か)、言語で世界を構築するスリリングさには痺れたので、好きな作家と言っても差支えない。本作は、原著である英語版が存在せず、本書発刊当時ではフランス語版に次ぐ出版なのだそうだ。本作は女性版「家畜人ヤプー」なる評されかたもあるみたい。内容としては、御主人様の要望通りに改造されたカスタムメイドールたちの生態を描き、その後反乱を描くという割とシンプルなストーリー。構築された世界を如何にして崩壊させるかというのがテーマというわけでもなさそう。かといって性差についての問題でもない。
ただ、自分としては次々と提示される通俗的キッチュなアイデアに満ち溢れた小説として楽しめた。ある意味、一人の少女の冒険小説でもある。疑問を持ちアイデンティティについて考える辺り、真っ当である。ただそこに横たわるのがおぞましい享楽、あるいは苦痛に満ちたガールたちの挿話が話を引きたてる。獣のように、あるいは道具のように扱われる彼女たちの実存を読み取るべきなのだろう。
後、個人的にアイデアは今では割とよくありそうな話なのだが、そこはワトスン、描写がえげつなく、時に禍々しいものを提供してくれる。要はこの作者の硬筆な文章には惹かれる、というのが自分にとっての醍醐味だったのだと思う。