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グランド・フィナーレ(2009年15冊目)

グランド・フィナーレ (講談社文庫)

グランド・フィナーレ (講談社文庫)

久々に阿部和重作品を読む。主人公の男の人物造形が一見ありがちだが、何とも奇妙な心情と性癖の持ち主なのだが、その内面を掘り下げるというよりも、外因から何かを吸収しているように思えた。何とも説明しにくい。離婚によって愛娘「ちーちゃん」に近づくことを禁止されている主人公が何とかちーちゃんに想いを届けるために奮闘するのだが、徐徐に明らかになってゆく主人公の性癖やそれに基づいた過去が露わになってゆくにつれ、変なことに同情を覚えたのだ。いや決して自分はロリコンではない(と思っている)のだが、とにかく変な感傷が転がってゆく。最後まで読み終わっても、何も解決していないのだが、ある少女との関わりがどういった意味なのか何とも読みとれない。とにかく不思議でならない小説なのだが、読後感はむしろ軽いとさえいえる。これは罪に関する小説でもなければ、再生に至る小説でもない。「現状維持」が確固として成り立っており、その文脈は奇妙なことに、様々な固有名詞が登場してくる度に、不思議な感触がある。よく分からん。どうこの小説を捉えていいのかわからない。しかし、何処かひっかかるところがあり、その辺りが文学的なある到達となっているのかもしれない。全然感想になってないが、読み込めば何か出てくるのだろうか。いかにも阿倍和重というジャンルの小説になっているという感覚がつかめたのがせめてもの僥倖なのだろうか。