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しとやかな獣

監督 川島雄三 1962年 96分
悪女礼讃 〜スクリーンの妖花たち/ラピュタ阿佐ケ谷
goo映画: Movie × Travel — 旅のような映画 映画のような旅

金のためにモラルなど捨て去った人々の騙しあいが、狭い公団住宅の一室を中心に繰りひろげられる実に痛快なブラック・コメディ。若尾文子が男を騙して金を巻きあげる悪女役にローレン・バコール風の髪型で挑戦。

女優の格が違うあやや。悪女というよりは、したたたかな女という感じ。自分の野望のために男共を手玉に取りまくっているわけなんだが、それがちっとも嫌な女に見えないところが、格というところでしょうか。凄いなあ。他の女性陣もなかなか、山岡久乃も、「あの人は恐ろしい人です」と言ってますが、この人も団地にやってくる人々と、家族の前では全然態度は違うし、ダメな息子をたしなめる姿もなんだか諦観の極地にいる感じでなんともはや。浜田ゆう子は、井川遥をもう少しふくよかにして、色気×3ぐらいで大変よろしい。顔が好みだね。ちょっときつめなんに可愛げを内包する喋りの声もまたステキ。わがままな女という感じだけど、妾元の作家先生には案外甘えてんだろうなあ(演技でも)、というのがよくわかってよろしい。
話は新藤兼人が、よくこんな話書いたよねという印象。「混血児リカ」ほどメタメタではないけれど。
演出も凄い。特に撮影と劇半の使い方。夕日をバックに踊り狂う姉弟の狂乱ぶりもすごいし、囃子調の音楽も使い方が凄い。始終やかましい感じの映画なのに、伊藤雄之助が、「雨漏りのするバラックで雑炊食べる生活に戻りたいのか!」と激昂した後、音が全く止んで呆然とした家族の表情を一人一人写す描写もアヴァンギャルド
まあこの映画を観ていると、まだ日本は戦後なんだよね、みたいな感想をもつのだ。