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非行少女

監督 浦山桐郎 1963年 114分
昭和の銀幕に輝くヒロイン[第54弾]和泉雅子/ラピュタ阿佐ケ谷
goo映画: Movie × Travel — 旅のような映画 映画のような旅
※映画を観に行った理由は、ただ単に人生において「不良少年」と「非行少女」を同じ週に観た、という記録が欲しかっただけだったりする。
主人公は若枝十五歳(和泉雅子)。アイコ十六歳ではないので、バーで酒をあおって、男客からもらった煙草を実に堂に入った吸い方をするところから映画は始まる。色々ひどい話で、若枝の家庭は母を亡くしており、飲んだくれの父親と継母がくっついて家は居づらくて、叔母が経営する冒頭のバーで盗んだハイヒールのいちゃもんをヒモ志望の男につけられて林の中で襲われて、金がないので深夜の学校へ忍び込んで金を盗もうとするところを用務員に見つかるとやはり襲われそうになったり、これまた叔母の経営する芸伎宿の手伝いをさせられて、そこから逃げ出すと、うっかり愛しの人の家の養鶏場に火をつけて前章させてしまい、事故なのに黙っているから保護施設に入れられる、と散々な展開である。
それでも先日見た「不良少年」に比べると救われた気分になれるのは、あちらが少年院の少年少女たちのその後の凋落を描いてしまったことに対して、こちらは一人の少女と彼女を愛する青年三郎(浜田光夫)の純愛が現在進行形で描かれているからなのだろう。将来はわからないが、現状は概ね彼らの真剣ぶりに信用がおけるので未来に希望が持てる。
和泉雅子は作中でもべっぴんさん扱いで、実際美しい。可愛げは描かれないが醸し出す雰囲気が可愛らしい。顔が丸っこいのが自分の好みというのもあるが。それでも冒頭の煙草を吸うシーンは格好良く吸っており悦に入っており、貫禄充分であるし、浜田光男との純愛の様子は転じて弱さと強さを兼ね備えていて実に魅力的。多分演技が非常に上手い。
演出の話。監督による若枝の不幸描写はぬかりなく、時折凄い。凄い2点をあげる。まず1点目。養鶏場火災シーンは実際養鶏場一件まるまる炎上させていて、そこから炎に包まれて逃げ出す鶏がいる。当然特撮とかCGではないので実際そうしていると思う(多分スタッフが後でおいしくいただきました的なものなんでしょうね)。和泉雅子を炎の目前に実際立たせたりもする。この時代演出上えげつない描写っていうのは実際の撮影時のえげつないような感じのものが多いので役者・スタッフは大変だったのだろう。2点目は炎上後警察か何かで、取り調べの後、謎の部屋に入れられる和泉雅子。壁中に書き殴りが施されて、和泉雅子も実際壁に向かってガリガリするのだが、同じ部屋には何故か少女がいる。で、そこで問題なのが、壁の一面の鏡に向かって泣き叫ぶ和泉雅子がいるのだが、それはマジックミラーでその裏は精神科医が「この子は攻撃性が…」どうこうと、語り合っている。これは見ていてうわあ、と思わず言いそうになり、とにかく、そういう調査の部屋に無垢そうな子供が既に入れられているのがおかしくて、人権無視の荒んでる昭和時代の一面を垣間見てしまった気分になる。
その一方純愛描写にも力が入っており、窓越しのキスシーンやラストで和泉雅子の大阪行き目前に引きとめようとする浜田光夫との駅の喫茶店の緊迫感溢るるタッチはなかなか見事。向き合う二人がいて和泉雅子の背中越しに浜田光男の顔をパンするシーンとその逆方向にカメラを置いて同じことを繰り返す等、作為の跡が見られてよい。
話的にもメロドラマというよりも政治的正しさに重きを置いた、要は暴れる若者が落ち着きを得て成長するということで純愛に決着をつける。そういう意味で大変清々しい気分になったのであったことよ。